昇華転写印刷の仕組みを解説
Tシャツやマグカップなどの印刷には、昇華転写印刷やインクジェット印刷、熱転写印刷などさまざまな印刷方法が採用されています。印刷方法によって、商品の素材や色、数量などによる向き・不向きがあるためです。 こちらでは昇華転写印刷の仕組みやメリット、デメリットなどの特徴を解説します。ほかの印刷方法との比較も見ていきます。
昇華転写印刷とは
昇華転写印刷とは、デザインを反転させた形でインクを専用の転写紙に印刷し、製品と密着させて熱と圧力かけることでインクを転写する印刷方法です。昇華転写印刷と呼ばれているのは、熱によってインクを昇華(=気化)させていることに由来します。
昇華転写印刷は製品にインクが浸透していくため、印刷面にインクが乗っているようなニュアンスにはならず、自然な仕上がりになるのが特徴です。繰り返し洗っても印刷が落ちにくいことから、ポリエステル製の布製品や陶器への印刷に向いています。
昇華転写印刷の仕組み
昇華転写印刷は転写紙にデザインを反転させて印刷。その転写紙を製品に密着させて、熱と圧力を加えて転写してインクを染みこませるという仕組みです。 印刷の工程は以下の通りです。
1. デザインを反転させたデータをもとに、昇華型インクで専用の転写紙に印刷をする
2. ポリエステルの布地などに転写紙を密着させて、熱を加えながらプレスする
3. 製品から転写紙を剥がす
昇華転写印刷のメリットとデメリット
昇華転写印刷は、転写紙に印刷したデザインを製品に転写してインクを染みこませるという仕組みによる特徴から、メリットとデメリットの両面があります。また、昇華転写印刷に対応する素材が限られていることから、用途としても向き・不向きがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
● 生地の質感を損なわない仕上がり ● インクの剥がれやひび割れが起こりにくい ● 発色がよい ● 細かいデザインや文字、グラデーションの印刷が可能 ● 小ロットの印刷に向いている |
● 素材はポリエステルや特殊コーティングをした陶器などに限定される ● 生地色が濃いと色が沈みデザインを再現できない ● アイロンや乾燥機に対応していない ● プレスの跡が残ることがある |
昇華転写印刷のメリット
昇華転写印刷はインクが生地に浸透するため、デザインを貼ったような違和感がなく、自然な仕上がりになります。また、色落ちすることやインクのひび割れが生じることもほとんどなく、耐久性も高いです。発色がよくグラデーションをきれいに表現できるほか、細かいデザインや文字にも対応できます。
さらに、版が不要なため、小ロットでの印刷に向いています。版とは、印刷するときに使用する大きなハンコのようなものです。小ロットの印刷では製版費用(版を作る費用)を含めると割高になってしまうことがあるため、昇華転写印刷のように版を使わない印刷方法の方が、コストの優位性が出てきます。
昇華転写印刷のデメリット
昇華転写印刷はインクを熱で気化させて転写するという仕組みですが、綿や絹、ナイロンといった素材には定着しないため、ポリエステル100%の生地にしか使用することができません。陶器も特殊なコーティングを施したものに限られるなど、活用できる製品が限定されてしまいます。
また、昇華転写印刷が向いているのは白や淡い色の生地です。濃い色の生地に印刷するとデザインが沈み込んだようになってしまいます。
昇華転写印刷を用いた製品はアイロンや乾燥機を使用することができないことにも注意してください。再びインクが気化した状態になり、色落ちや色移りをしてしまう可能性があるためです。
昇華転写印刷と熱転写印刷・インクジェット印刷の違い
布製品に印刷する方法には、昇華転写印刷のほかに、熱転写印刷やインクジェット印刷といった方法があります。
● 熱転写印刷:デザインを印刷した専用のシートを生地に圧着させる印刷方法
● インクジェット印刷:直接インクを吹き付ける印刷方法
昇華転写印刷と熱転写印刷、インクジェット印刷の違いを比較してみましょう。
昇華転写印刷 | 熱転写印刷 | インクジェット印刷 | |
---|---|---|---|
製版コスト | 発生しない | 発生しない | 発生しない |
綿へのプリント | 非対応 | 対応 | 対応 |
ポリエステルへのプリント | 対応 | 対応 | 非対応 |
印刷する生地の色 | 生地の色が濃いと色が沈んでしまいデザインを再現できない | 生地の色を選ばず鮮やかにプリントできる | 生地の色がデザインの色に影響する ※デザインの下にホワイトインクを敷くことで、生地色の影響を受けずにプリントできる |
仕上がり | 生地の質感を損なわない仕上がり | 貼り付けたような仕上がり | 生地の質感を損なわない仕上がり |
剥がれ | 剥がれやひび割れは起こりにくい | 細かい印刷が剥がれてくる場合がある | 剥がれやひび割れは起こりにくい |
昇華転写印刷と熱転写印刷、インクジェット印刷はいずれも製版が不要なため、小ロットの印刷に向いているという点では共通しています。
昇華転写印刷はポリエステルの白や淡い色の生地への印刷に向いています。発色が鮮やかで自然な仕上がりであり、インクの剥がれやひび割れが起こりにくいことが利点です。
熱転写印刷は綿やナイロン、ポリエステルにも印刷が可能で、生地の色も問わないため、幅広く活用できます。ただし、生地に貼り付けた感じの仕上がりとなり、シートを細かくカットすると剥がれやすいことから、縁どりがつけられることがあります。
インクジェット印刷はポリエステルやナイロンといった合繊繊維には使用できず、綿100%の生地にのみ使用できます。なお、インクジェット印刷も生地の色が影響しますが、印刷の背面にホワイトインクを敷くことで濃い色の生地にも対応が可能。一方、ホワイトインクを使わない場合は、生地の質感を損なわない仕上がりになります。
昇華転写印刷を用いたラクスルの商品例
ラクスルでも昇華転写印刷が使われています。 昇華転写印刷を用いている商品の一例を挙げると、「湯のみ」の印刷に使われています。
「全面印刷陶器オリジナルマグカップ」は持ち手部分などを除いて、飲み口から下まで全面に印刷ができることが特徴。こちらも注文は1個からで100個の場合は85,395円です。
いずれの商品も印刷できる部分が広く、オリジナリティのあるグッズを制作できます。